いまや世界中で取り上げられつつあるマインドフルネスですが、なぜここまで多くに人に求められ実施されているか、その理由はご存知でしょうか?
大手メディア記事やTV番組でも特集が組まれ、「マインフルネスは絶対に効果がある!」、「マインドフルネスはやったほうが良いよ!」となんとなく丸め込まれそうな雰囲気。
しかし、本当に自分にとってマインドフルネスは必要なんだろうかと疑問に思っている方も多いと思います。
そこで今回は、世間を賑わせているこの「マインドフルネス」とは一体どんなものなのか、これを行うことにどのような意味があるのか、これらの疑問について解説していきます。
マインドフルネスとは?
マインドフルネスとは、具体的になにか動作や行動を起こすことではありません。
「マインド」という言葉の通り、自分の心や頭の中の「とある状態」のことを指します。
それは「いま、ここで起こっている経験や出来事に能動的に意識を向け、それらに評価や判断と加えず注意だけ向けること」。
たとえば食べ物を食べている時、その食材に対して「美味しい」、「不味い」、「前食べたやつに比べて……」など感情で判断や評価せず、「こんな匂い」、「緑色なんだ」、「ゴツゴツした形だな」など、食材のいまの状態について客観的に観察します。
このように、なにかにつけて善し悪しを判断しない「ノンジャッジメンタル」の考えによって、目の前で起きている出来事をありのままに受け入れていきます。
このような状態を「マインドフルネス状態」と称するのです。
マインドフルネスと瞑想
例では食事を挙げましたが、多くの場合このマインドフルネス状態に至る手法として自分の「呼吸」のみに意識を向ける「瞑想」が取り入れられています。
あの仏教における瞑想で間違いありません。
もともとマインドフルネスの考えは、仏教における瞑想を科学的に分析し効果を立証したことから広まっていったのです。
そして厳密に言えば、先述の例で挙げた食事の場面でのマインドフルネスも「食べる瞑想」と呼ばれており、このようにマインドフルネス状態と瞑想には深い関わりがあるのです。
他の多くの記事や書籍では、マインドフルネスという言葉を瞑想そのものとして扱ったり、マインドフルネス瞑想と呼称したりとバラバラですが、あまり深く考えずほとんど同じ意味と捉えても問題ないでしょう。
マインドフルネスの目的とは?
Googleでは世界で初めてマインドフルネスの研修プログラムが導入されたり、医学界では精神医学、脳科学の分野で日夜研究が進められていたりしますが、一体なんの目的でこの「マインドフルネス」を取り上げているのでしょうか?
マインドフルネスは世界中で起こっている一種の流行ですので、人や分野によって多くの違った目的があります。
その中でも特に多いのは、ビジネス、医学、そして個人としての目的を達成するためでしょう。
今回はこの3つの分野に絞って、各分野でマインドフルネスを行う目的を以下で見ていきす。
ビジネス界でのマインドフルネス
先述の通り、Googleではいち早くこのマインドフルネスに注目し取り入れ、現在ではヤフー、インテルなど他の大企業も受け入れつつあります。
その理由として、マインドフルネスを行うことで社員一人一人の仕事能率、コミュニケーション能力、アイデア創造力の向上が見られたからです。
これらは実際にGoogleで開発された独自のマインドフルネス研修プログラムSIF(search inside yourself)を行った実施結果から明らかになっています。
また、マインドフルネスを取り入れた企業エトナの調査結果では、社員のストレスが三分の一に低下、仕事の能率の向上、一人当たりの医療費が減少し年間生産性が3000ドル高まった、という報告も上がっています。
まさに企業、ビジネスパーソンどちらにとっても良い結果が得られ、そのことがいまビジネス界でもマインドフルネスを取り入れる目的となっているのです。
医学界でのマインドフルネス
医学界では、マインドフルネスを行うことによる身体的ストレス、精神的ストレスの軽減によって、多くの療法のさらなる進化が期待されています。
実際に現在のマインドフルネス流行の発端の一つとなった、ジョン・カバットジン氏開発の「マインドフルネスストレス低減法(MBSR)」は、もともと身体の痛みを取り除くことが目的です。
そして、そのマインドフルネスストレス低減法に認知療法の手法を取り入れた、うつ病予防プログラム「マインドフルネス認知療法」も誕生しています。
しかし本当にマインドフルネス、つまり瞑想によって痛みやうつ病の改善に効果があるのでしょうか?
答えは「実際に効果が出ている研究結果が発表されている」で、確実ではないにせよ改善したという結果が出ているのです。
オックスフォード大学チームの研究の中に、「重度うつ病患者を無作為に分け、抗うつ薬治療を継続したグループと8週間マインドフルネスを行ったグループを作り、その後2年間追跡調査を行った」というものがあります。
その結果は驚くべきもので、うつ病の再発率に差がほとんど無かったのです。
また、最近では「体の痛みは脳疲労のストレスからくる」というアプローチで研究が進められています。
「脳疲労からくるストレスによって体の不調が起こるのであれば、脳疲労を回復させれば体の痛みも消えるのではないか」。
短絡的すぎると思われるかもしれませんが、現在もこの考え方に基づき最先端の医療現場で研究されている事実があります。
他にも、マインドフルネスを行うことで免疫機能の向上がみられたという報告もあり、まさにマインドフルネスは医学分野においても注目されているといえるでしょう。
個人でのマインドフルネス
個人で行うマインドフルネスの目的の多くは、ストレス解消、集中力の向上、睡眠不足や入眠障害の克服が挙げられるでしょう。
最近ではダイエット効果もあると話題ですので、体重減少や食生活改善のために取り組みたいという人も多いかもしれませんね。
もちろん、マインドフルネスはこれらすべてに効果ありです。
マインドフルネスは「気づきのトレーニング」とも呼ばれ、筋トレと同じく長時間行えば行うほど効果が大きくなっていきます。
この気づきが最大のポイント。
自分のストレスに気づく、注意力が散漫になっていることに気づく、余計な食欲、またはお腹がいっぱいであることに気づくなど、さまざまな「目の前の現象」に気づくことによって客観的な視点を持てるようになります。
客観的な視点を持てれば、ストレスの原因や余計に食べようとしている自分に気づけ、その考えについて冷静に分析が可能です。
それにより衝動的な怒り、不安、食欲などを捨て去れるようになります。
オカルトのように聞こえますが、これらはマインドフルネスを行い脳の機能が強化されることで、実際にそういった理性や感情の抑制機能が働きやすくなることに起因しています。
つまり、科学的根拠に基づいた効果が証明されているのです。
また睡眠に関しても、マインドフルネス瞑想を行い雑念が浮かばないようになることで、質の高い睡眠をとることができます。
寝る前の考えごとのせいで頭がフル回転して眠れない、そんな人に是非おすすめしたい方法です。
マインドフルネスは、このような個人個人の目的を果たすためにも取り入れられているのですね。
マインドフルネスにはどういう効果がある?
マインドフルネスを行うことによる効果は以下の通りです。
・集中力・記憶力・創造力の向上
・コミュニケーション能力、共感性の向上
・怒りなどのネガティブな感情の制御
・ストレスや疲労を感じにくい脳を形成できる
・反芻思考脱却によるうつ病の改善、再発防止
・睡眠の質の向上
他にもいろいろありますが、私たちの生活に密接に関わっているのはこれらの効果でしょう。
これらの効果が得られる背景には、使いすぎている脳を休ませることによる脳疲労の軽減、そして脳の構造自体が変化することにあります。
そう、本当に脳の形が大きくなったり、過剰な脳機能が落ち着いたりするのです。
これらの結果も、実際の研究結果によって明らかにになっています。
マインドフルネスは脳みそを休ませる
人間の脳は常になにかを考えたり、善し悪しを判断していたりするので、いつも全開で働いています。
そのエネルギーの消費量は全身の約20%であり、いかに多くのエネルギーと食らっていることがわかるでしょう。
そのエネルギー消費のほとんどは、人間がなにもせずボーっとしている時に消費されます。
なぜかというと、人間はボーっとしているときほど、頭の中ではなにかを考えたり思い出したりしていたりして、より脳みそが働らいているから。
休日でなにもしていないのに疲れるのは、こうした理由からなのですね。
そして脳を休ませる方法は、マインドフルネスの実施です。
瞑想を行い「マインドフルネス状態」、つまり余計なことを考えないようにすれば、完全に脳を休息モードに移行していきます。
こうして脳疲労を回復させることによって、集中力の向上、ストレスの軽減などに大きな効果を発揮するのです。
マインドフルネスで脳が変わる!?
たとえば、先述したマインドフルネスストレス低減法を8週間行うことによって、海馬など記憶に関する脳機能の容量が増加したり、脳疲労の原因になる雑念をコントロールする後帯状皮質(こうたいじょうひしつ)と背側前体状皮質(はいそくぜんたいようひしつ)との連結が増加したりなど、実際に脳構造の変化が見られました。
つまり記憶力が良くなったり、本当に「疲れにくい脳」に変化したり、雑念制御によって良い睡眠が取れたりするのですね。
また、人間の理性を司る前頭葉(ぜんとうよう)と、本能を司る偏桃体(へんとうたい)の関係にも変化が見られ、ストレスに対し反応する偏桃体の密度の減少が起こりました。
つまり、ストレスへの反応が弱まり、理性を司る前頭葉の働きとの関係が良くなり、「ストレスにうまく対処できる脳」へと変化したのです。
他にも脳の疲労のほとんどの原因となっている脳の「デフォルト・ネットワーク状態」のコントロールや、いろんな考えや思い出が頭をごちゃごちゃにする「モンキーマインド」の解消などの効果も見られました。
このように、マインドフルネスは科学的に効果が証明されている信ぴょう性の高い取り組みなのです。
もちろん、科学的な効果の立証だけでなく、自分の考え方の変化や物事への捉え方の変化など、自分の気持ちなど精神的な部分での成長にもつながりますよ。
マインドフルネスをやる目的は精神や脳を休息、強化させること!
マインドフルネスはまさに「脳と心の休息法」であり「脳と心のトレーニング」です。
この効果は絶大であり、その場での疲労回復やストレス軽減だけでなく、なんと脳構造まで変化させ恒久的な効果も期待できるほど。
それほどの効果があるからこそ、現在も世界中の多くの分野、そして人々が研究、実施に勤しんでいるのです。
もしマインドフルネスに興味が出たのであれば、是非試してみてはいかがでしょうか。
また、この記事執筆にあたり、久賀谷亮氏の著書『世界のエリートがやっている 最高の休息法――「脳科学×瞑想」で集中力が高まる』を参考にしています。
科学的なマインドフルネスについてより知りたい方は、是非読むことをおすすめします。