「外からの音にすぐに反応して、注意力が足らない」
「椅子に座っていても、そわそわしてじっとしていられない」
「話を最後まで聞かずに、急に話し出す」
「園児の10人に一人はこういう子供がいて、保護者に医者の診断を受けるようそれとなしに促すけど、保護者は異常とは考えていないみたい」
これは近所の保育園に勤めている保母さんの言葉です。
園児を長年見てきた保母さんだから、ADHD(注意欠陥多動性障害)の疑いに気が付いたのでしょう。
確かに、子供は基本的にどのようなものでも興味を持ち、じっとしていることが苦手な人種ではありますが、ある程度の年齢になると先生の注意を理解したり、行動にも落ち着きが現われてくるものですが…。
ADHD症状の子供に対しては、しつけが行き過ぎたり、できないことへのストレスが溜まりがちですよね。
注意散漫や多動性が年齢や発達段階に不相応な場合は、医師の判断を仰ぎ適切な対応をとりましょう!
まずは正しい情報を得ることが、家族や本人にとってもストレスレスの生活に近道です。
注意力の向上や衝動的感情をコントロールする方法として、マインドフルネストレーニングが世界中で注目を集めているのをご存知ですか?
ADHDと診断された方、病気ではないものの落ち着きがなく集中力に欠ける方に、マインドフルネストレーニングはお勧めですよ。
早稲田大学大学院人間科学研究科で、「児童に対するマインドフルネストレーニングが、ADHD症状改善に及ぼす影響」という興味深い研究結果が発表されていますので、ご紹介いたします。
マインドフルネスとは?
まず、マインドフルネスについてお話しますね。
マインドフルネスとは、集中力向上やストレス改善に効果が高い心のトレーニング方法です。
やり方は比較的簡単ではありますが、効果を得るためにはコツを習得して繰り返し練習する必要があるでしょう。
「あること(もの)」に意図的に意識を集中させて、自然と脳裏に浮かぶ事柄に対し自分の考えや感情を持ち出さず、観察してあるがままに受け入れてください。
脳裏に浮かぶことを、第三者が眺めるような気持ちで観察するとよいですね。
また元の「あること(もの)」に意図的に意識を戻して集中しますが、この繰り返しを行っているうちに脳裏に浮かぶ雑念が減り、集中力が増していきます。
また、脳裏に浮かぶ雑念を観察していると、今まで自分では気が付かなかった自分の感情発症パターンや思考傾向に気が付くことができ、人間関係の向上に役立てることができますよ。
たとえば、自分が問題を正しく理解する前にすぐに怒りを表すタイプだとわかれば、次に問題が発症したとき湧き出た怒りを押さえ、まず問題を正しく認識してくださいね。
マインドフルネストレーニングを続けていくと、心に浮かぶ衝動や事柄に対し内観する癖が付き、ADHDの特徴である不注意や多動性、衝動性などの改善にも期待がもてるでしょう。
マインドフルネスはADHDに効果がある?
早稲田大学大学院人間科学研究科では、ADHDを「不注意優勢型」「多動性・衝動性優勢型」「混合型」の三タイプにわけて、マインドフルネストレーニングが及ぼすADHD症状改善効果の研究を行っています。
ADHD患者の不注意行動に関しては、三つのタイプともマインドフルネストレーニングで改善効果が認められました。
しかし、他動・衝動行動に関しては、不注意優勢型の児童には明らかな改善効果が認められたものの、混合型の児童ではさほどの効果は認められなかったようです。
原因の一つとして考えられるのは、それぞれの脳の異常部位が違うこと。
ADHD患者の脳をよく見てみますと、不注意優勢型は視空間の注意を司る頭頂葉に異常がありますが、行動を抑制する前頭葉には問題がなく、多動性・衝動性優勢型と混合型には、前頭葉もしくは前頭葉と頭頂葉の両方に異常があることがわかっています。
同じADHDの患者でも、タイプごとに脳内異常の部位が違っていることとマインドフルネストレーニングとの関連、また調査に協力してくれた児童の中にADHDだけでなく高機能自閉症やアスペルガー障害を患っている者もいたため、更なる研究が待たれるところですね。
マインドフルネストレーニングを取り入れたADHD症状の改善研究は、いろいろなところで行われており、児童だけでなく青年(平均15.6歳)や成人(平均48.5歳)においても高い効果が認められています。
参考リンク
児童に対するマインドフルネストレーニングがADHD症状改善に及ぼす影響
まとめ
ADHD症状を改善しないまま社会に出ると、「空気を読めない人」「変わり者」といったレッテルを貼られることもあるでしょう。
友人関係や社会生活をストレスなく過ごすためには、ADHD症状を自覚し克服することが重要ですね。
ADHD患者でありながら、マインドフルネスと出会い平穏な人生を送っている人もいます。
ADHDの児童は、学習障害だけでなく思春期や成人になって失敗しやすく、自暴自棄になって犯罪行為や薬物依存症のリスクも高くなるといわれています。
早い段階からマインドフルネストレーニングを取り入れて、明るい未来へと向かってほしいものですね。